風邪を引いた。完全に油断していた。 年末年始にそこまで無理をした覚えはないのに、こういうのはある日突然くる。熱もあるし、節々も痛いし、今日は休もうかな、と思った。
「連休明けに休むのは甘いかな」と一瞬考えたけど、画面を見てコードを書く感じでもなかった。無理に動いても何も残らなさそうだし、今日はもう諦めるか、という結論にした。 この「諦めるか」の瞬間に、毎回うっすら罪悪感が湧くのは不思議だ。誰かに怒られるわけでもないのに。
人間って、何もしていない時間ほど「本当は何かすべきでは?」という思考が勝手に出てくるらしい。脳の仕組み的にも割と普通だそうで、たしか脳が暇になると過去や未来を行ったり来たりして、不安を増幅させる、みたいな話だった気がする。
そんな状態で、いったん布団に戻って少し寝ていた。 夕方になって目が覚めた。 まだ調子は悪いが、これ以上眠れる感じでもなかった。
少し気になることがあったので、スマホで Reddit を開いて、仕事に関係する技術的な投稿を軽く当たっていた。完全に休むほどでもないし、かといって腰を据えて作業する気力もない。こういうときは、軽く調べ物をするくらいがちょうどいい。
その流れで、普段なら読み飛ばしてしまうような投稿に、なぜか目が止まった。
「バーンアウトを経験した開発者は、回復までどれくらいかかった? どうやって?」1
ああ、今これを読むタイミングか、と思った。 ターゲティングが凄いな、みたいな気持ちになる。
投稿者の状況はわりと重たい。休職して一度は良くなったけど、職場に戻ったらまたダメになった。転職しても、今度は一ヶ月で限界が来た。 これを読んだとき、「分かる」という感覚が自然に出てきた。自分もまったく同じ、というより、「環境を変えれば解決する話じゃないよな」という感じだ。
引っ越したら人生が変わると思っていた時期とか、部署が変わったら楽になると思っていた時期とか、だいたい少しは良くなる。でも、根っこが残っていると、形を変えてまた出てくる。
コメント欄を読んでいくと、回復までの時間は本当にバラバラだった。 一ヶ月の人もいれば、半年、一年、数年かかった人もいる。しかも「完全復活!」みたいな話はほとんどなくて、多くは「前とは違う距離感で仕事している」という落ち着き方をしている。
これを読んで、少し安心した。 「治る=元に戻る」だと思い込んでいた気がする。でも実際は、怪我と同じで、完全に元通りというより、「付き合い方を覚える」ほうが現実的なのかもしれない。
読み進めるうちに、一番ハッとしたのは、他人の顔色を伺いながら仕事をしている自分の姿だった。 怒鳴られるわけでも、理不尽な職場でもないのに、「今これ言って大丈夫かな」とか、「この人、今日忙しそうだな」とか、Slack を投げるタイミングを妙に気にしたりする。そういう小さな判断を、一日中やっている。
人間の脳って、意思決定の回数が増えると消耗するらしくて、「決断疲れ」なんて言われたりする。 つまり、顔色を伺っていると、コードを書く前にもう HP を削られている状態なんだと思う。そりゃ疲れるよな、と腑に落ちた。
同時に、他人の顔色を伺いながら仕事をしている自分が、少しバカらしく感じた。 怒りというより、「ああ、これは消耗する構造だな」という理解に近い。
今日はたぶん、休んだからこの文章が刺さったんだと思う。 普通に働いていたら、「ふーん」で終わって、ブックマークして忘れていた気がする。休んで、体調も微妙で、少し弱っていたから、そのまま入ってきた。
だから今日は、「休んでしまった日」ではなくて、「仕事との距離感が、少し見えた日」ということにしておく。
明日どうなるかは分からない。 急に元気になるとも思っていないし、顔色を一切気にしなくなるとも思っていない。 ただ、「あ、今これで削られてるな」と気づける回数が増えたら、それだけで少しはマシになるんじゃないかと思っている。